飼い葉桶に寝かせた

 

マリアは月が満ちて、初めての子を産み、布にくるんで飼い葉桶に寝かせた。宿屋には彼らの泊まる場所がなかったからである。『ルカによる福音書』2章6〜7節 

 

▶︎みなさんは、どんなクリスマスがお好きですか?私は、キラキラしたクリスマスシーズンの街にワクワクします。そして、「きよしこの夜」の清らかな静けさも大好きです。▶︎もう、クリスマスのお話??・・・と思われた方もいらっしゃるでしょうか。クリスマスは12月24日(クリスマス・イブ)と12月25日(クリスマス当日)だけが大切なのではありません。▶︎毎年、クリスマスまでの約1ヶ月間は、クリスマスを待ち望む期間で「アドベント(待降節)」と呼ばれています。今年は、11月29日(日)から12月24日(木)までがアドベントの期間です。▶︎本園でも、アドベントの期間の子どもたちは、一日、また一日と、次第に近づいてくるクリスマスをワクワクと楽しみにし、待ち望みながら、園生活を送ります。

▶︎さて、12月25日がイエス様がお生まれになった日として考えてみると、11月の頃は、マリアは、自分の大きなお腹を大切に抱えながら、この子の誕生を心から待ち望んでいたことでしょう。この子については、マリアは天使から、とても特別な存在なのだということを聞いています。しかし、マリアにとっては特別な存在であるかどうかではなく、一人の母として、とにかく無事に元気に誕生してほしいという思いだったことでしょう。そして、月が満ちてイエスが誕生します。何という素晴らしいことなのでしょう。▶︎しかし、イエスが生まれた場所は立派な宿屋の部屋などではなく、薄暗い家畜小屋でした。ベビーベッドの代わりは飼い葉桶(家畜が餌を食べる餌入れ)でした。それでもマリアは本当に嬉しかったことと思います。その喜びは、救い主の誕生ということ「以上に」わが子の誕生の喜びであったことと思います。(そして、その喜びは夫のヨセフにとっても同様に大きなものだったでしょう。)

▶︎一方で、その当時、ユダヤ人たちが熱烈に待ち望んでいたのは、絶対的権力と権威を誇るローマ皇帝を打ち負かすような強力なリーダーとしての救い主でした。しかし、本当の救い主は、当時の人々が予想もしない、全く違う姿でひっそりと誕生しました。

▶︎私たちは、なぜ、こんなに素朴で飾り気のない貧しい姿でのイエスのご降誕のお話に希望を見出し喜びを感じるのでしょうか。よく考えると不思議なことです。たぶん、それは一人ひとりの人間にとって本当に大切なことは何かを指し示しているからではないでしょうか。こんな思いの中で、賑やかで華やかできらびやかなクリスマスを楽しみにしつつ、素朴で飾り気のない清らかなクリスマスを心から待ち望みたいと思います。

              園長 松永 章(まつなが あきら)